ハリウッド版攻殻機動隊「GHOST IN THE SHELL」は原作と比較してみると10倍楽しい。(前編)

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スカーレット・ヨハンソン主演で2017年に実写映画化された「GHOST IN THE SHELL

公開前は色々と不安な要素もありましたが、いざ映画を観てみると、期待していた以上に面白かったです。

 

ストーリーの中に原作の素材がふんだんに取り入れられており、ハリウッド的なド派手な改変はないように思えました。

 

ただし、各映画レビューサイトの酷評コメントを読むと、「高級なB級映画」「原作に媚びすぎ」など、「確かにそうかも」と思うのもまた然り。(^ ^;)

荒巻課長なら「言い得て妙だな」と言ってくれそうです。

 

アマゾンプライムで字幕版・吹き替え版が無料だったので、改めて原作と比べながら観てみました。

 

■原作とは

今はアニメシリーズの方が有名かもしれませんが、原作は1991年初版、士郎正宗氏の漫画「攻殻機動隊」(講談社)です。ちなみに原作の副題は「THE GHOST IN THE SHELL

 

以下の比較考察の際には、便宜上、アニメーション映画1作目「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」を映画1、続編の「イノセンス」を映画2

アニメシリーズの「STAND ALONE COMPLEX」をSAC、「2nd GIG」をGIG、「Solid State Society」をSSSと省略します。「ARISE」はそのままです。

 

それでは、ストーリーに沿って、映画を観てみましょう。

※ネタバレがありますのでご注意ください。


■素子(ミラ・キリアン少佐)の義体作成シーン

 映画1のオープニングをCGで見事に再現。原作にも義体を作っているシーンがありますが手作業で顔表面の塗装を整えていたり、素子本人が横で見ていたり、士郎氏の解説が欄外に書かれていたりと、とても情報量が多いシーンとなっています。

 ところで、少佐が目を覚ますシーンは、映画「バイオハザード2」のアリスが病院で目を覚ますシーンを思い出させます。少佐の名前(ハンカ社につけられた偽名)もミラですし。

 

■腕につけられたバンドの番号 2571

 原作、映画1に出てくる人形使いのコードネームが2501なので、おそらくそこからとったと思われます。

 

■酒のために肝臓を義体

 作戦会議中、イシカワが肝臓を義体化したことをトグサに呆れられるシーンがありますが、映画1では、素子とバトーが船の上でビールを飲みながら、義体によるアルコール分解機能で作戦待機中でも飲んでいられると皮肉混じりに会話しています。

 

■猫の幻覚

 猫が歩いている幻覚を素子が見るシーン。マトリックス(原作及び映画1にインスピレーションを得たことで有名)にも主人公ネオが黒猫のデジャブを見るシーンがありましたね。関係があるかはわかりませんが。

 

■芸者ロボット

 見た目はSAC1話に出てきた芸者ロボットに似てますね。動きの気持ち悪さには笑いました。少佐に撃たれる直前に顔が開くシーンは映画2。ただし、撃たれた直後の顔はもとに戻っており、少佐も驚いた様子だったので、顔が開いたのは映画2と違い、幻覚だったと思われます。

 

■作戦会議部屋の色合い

オレンジを基調とした立体映像は映画2の作戦会議部屋の様子とよく似ています。映画1では緑と青が基調だったので、映画2ではオレンジにしてみたと、押井監督が映画2の副音声で解説していました。

 

■繁華街の様子は香港がベース

 映画1の付録解説にも舞台のニューポートシティの街並みは香港をモデルにしていると書かれています。

 歩いている素子とバトーに言い寄ってバトーに一喝されるキャッチの男は、原作で素子に「失せなスケベ野郎」と一蹴される男を元にしている?

 

■野良犬の名前はガブリエル

 映画2でもバトーが自室でバセットハウンドを飼っています。

 

■ロボット解析医

 映画2にでてくるハラウェイさんそのままですね。目がパカッと開くシーンやタバコ好きなところもそのままです。

 ロボットに対する愛情ははあまり感じられないところが、ハリウッドらしいなと思います。(人型ロボットがそんなに怖いんですかね)

 

■バトーはヤクザの経営する店が好き?

 ヤクザが経営するバーサウンドビジネス」に素子とバトーで乗り込む際、バトーが「俺はこういう(ヤクザの)店が好きでね。」というシーン。映画2では、トグサとの会話で「俺もヤクザは嫌いだ。」というシーンがあります。反対のことを言っている台詞に見えますが、結局このあと映画2と同様、銃で店のなかにいる敵を蜂の巣にするので、ブラックジョークだったんですね。

 素子の服装はARAISEっぽい赤を基調としたスーツ。

 

■爆弾の爆発に巻き込まれバトーが義眼に。

 映画2の、階段の上から手榴弾が落ちてくるシーンではバトーがとっさに義眼で照準を合わせ銃で撃ち抜いたので無事でしたが、本作ではここでバトーが目をやられて義眼になります。


 原作では自宅を襲撃された素子が、恋人の公安1課部長(課なのに肩書きはなぜか部長)と共にC4の爆発に巻き込まれるシーンがありますがこちらも無事。(病院送りにはなりますが)

 

■犬の世話を快諾してくれる少佐

 見つめてくる犬をわしゃわしゃする少佐。かわいいですね、どっちも。

 映画2では、急な出張で犬の心配をするバトーに対して、世話が面倒な犬なんて飼うな!と、イシカワが怒るシーンがあります(そんなに怒らなくてもいいのにと思いますが。結局犬の世話はトグサの奥さんがすることに。)

 

■哀れなゴミ回収業者

 原作、映画1と同じく電脳をハックされて一人娘がいるという疑似記憶を上書きされています。

 原作ではゴミ回収業者のほかにテロの実行犯がいましたが、映画では一人で二役を兼ねています。バトーが現場に車で乗り付けてドアの後ろにしゃがむシーンや、光学迷彩をつけて逃げる犯人を素子が追い詰めてボコボコにするシーンは、カメラワークを含めて映画1の描写とよく似せています。

 

 自分の顔写真を娘の写真だと思い込んで「天使みたいだろ」という可哀想な清掃業者は、映画1にも出てきましたが、ハリウッド版の写真の形は映画2のほうですね。

 個人的には、映画1の防犯カメラ映像の切り抜き写真の方が、家族がいない孤独さを表現していてゾクッとしました。

 

■情報をノイズと言いきっちゃうの?バトーさん

 映画1では、「夢も疑似体験も自分にとっては同じ現実なのだ」と言うバトーに対して、ハリウッド版では「ただのノイズ」と断言。自分が獲得する情報をどう捉えるかということは、原作や映画1の素子とバトーにとって重要なテーマとなっているので、ここでノイズと切り捨ててしまう言い方には、違和感があります。

 

後半に続きます。